病院から地域へと精神医療の改革が叫ばれた時期と軌を一として1972(昭和47)年11 月に「東京精神科医会」が発足しました。発足当時は大変な苦労があったと推察します。その苦難を乗り越えて今日の東京都精神神経科診療所協会に至っています。50年前から地域の精神保健・医療・福祉関係者とともに心を病む人のために地道な活動が始まりました。2011(平成23)年6月に、現在の組織である一般社団法人東京精神神経科診療所協会(略して「東精診」といいます)に衣替えしました。
今日、東精診には都内の精神科専門医約270 名が会員として参加しています。精神科専門医(日本精神神経学会)の集まりであり、日々臨床活動に取り組み、精神科医療の知識や技術を高めるために定期的に自己研鑽をしている会です。精神疾患の在り様は近年複雑化しており、診断や治療の仕方も少しずつ変化しています。うつ病、パニック障害、発達障害、認知症など様々な病態を伴う精神的、身体的不調に対して対応できるかかえて精神科診療所を受診する方々が年々増え続けています。このような傾向は全国規模で認められたことから、2012(平成25)年、わが国で最も憂慮すべき4大疾病、「がん」、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」、「糖尿病」に「精神疾患」が新たに加わることになりました。
このような現状に対して、日頃の診療にしっかりと取り組みつつ、社会のお役に立てることを願って東精診は微力ながらもいろいろな事業に取り組んできました。ホームページで施設紹介を行い、地域医療、高齢者介護、精神科救急、学校現場対応、職場の産業メンタルヘルスなどの各テーマを公開シンポジウムや市民講座、研修講座で取り上げてきました。また、最新の情報、知見を豊富に盛り込み、かつ、会員自らが発表しながら研鑽を重ねる研修会を数多く開催し、会員ならびにスタッフのレベル向上をめざしてきました。
なお今後もまだまだやるべきことが山積しています。大都会、首都東京という類まれな立地環境で多くの高いハードルが立ち塞がっていますが、これまでの実績を踏まえつつ、かつ、関係機関と密接に連携協力しながら、社会のニーズに応えるべく、自分たちでできることに一生懸命取り組んでいきます。
東京精神神経科診療所協会
会長 芦刈 伊世子
今年度より日本精神神経学会の代議員の女性の比率が格段に増えました。軌を一にして2021年5月、当会でも初めて私が女性会長として推挙されました。男性のみでなく女性目線からも様々な心の病に対して心配りをしていきたいと思います。
本会の先駆け「東京精神科医会」の初代会長荻野利之先生、次いで、亀井康一郎先生、村上敏雄先生、関谷透先生、穂積登先生、窪田彰先生、平川博之先生、中野和広先生、神山昭男先生へと受け継がれました。発足以来これまで誠実で親身あふれる精神科臨床の伝統と、苦難を互いの力を寄せ合いながら乗り越えてきた助け合いの精神が東精診の誇りであり、将来へ受け継ぐべき大切な宝でもあります。2020年新型コロナ感染症が流行し、現在も尚、緊張感をもって生活しなければならず、日本全体実際に会って、交流していくということがまだまだ躊躇される世の中です。今までの歴代会長の多大なるご尽力と会員ひとりひとりの力量・努力と会員同士の円滑な活動により、東精診は東京都民の心の健康維持を支援し、病んだ人たちには適切な医療を提供してきたと思います。
東精診のフィールドは、メトロポリタン東京、日本最大の1394万人都市、54万人の外国籍人口、日本の中枢という現実の中にあります。この環境に含まれる他に類をみない多彩な特徴、多様な交絡要因が、人々の様々なメンタルヘルス問題にも深く影響を及ぼしているようにうかがえます。さらに、新型コロナ感染症の影響で心を病んだ人がますます増え、心と脳の老化に拍車がかかっていくのではないだろうかという厳しい環境の中で、患者様の診療環境をよりよい状態に保ち、おちついて安心して受診できる、相談できる場を確保しつつ、多くの問題解決へ向けて、今般の選挙で選任された理事、監事の諸先生とともに精一杯責務を全うしたいと思います。
皆さまのご支援、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
東精診の会員は、精神科の専門知識やトレーニングを積んだ上で取得できる、日本精神神経学会認定の「精神科専門医」や、国の定める「精神保健指定医」等の精神科領域の専門資格を持っていることが入会の条件となっています。
精神科には、統合失調症、うつ病、社会不安、対人恐怖、強迫性障害、パニック障害、適応障害、認知症といった様々な疾患や、児童・青年期、老年期といった年代別に現れてくる病気もあります。治療や支援方法も、精神療法、薬物療法、心理カウンセリング、デイケア、復職支援プログラム、生活指導など多種多様です。
よって、診療所ごとにその専門性も様々です。ホームページでは、それぞれの診療所の持つ機能や専門分野についての情報を掲載しています。近所の診療所を探したい、専門分野を知りたいなど、受診先で困られている際、是非ご活用いただき少しでもお役にたてれば幸いです。